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三嶺トレッキング

先日のトレッキング(山歩き)の様子を紹介します。
一人でも多くの方に高知にも、四国にも、こんな山があるんだなぁ~と興味を持ってもらい、そこから何かいい風がふけば嬉しいです。

この山系ではシカの食害が深刻で、増えたシカと森の植物の生態系バランスが崩壊し、草という草が根こそぎ食べられており、今では大木の皮まで食べ始めています。シカの侵入を防ぐため山を縫うように防護ネットが張り巡らされ、登山者はそのネットを開けて進んで行きます。しかし、ネットを通れないのはシカだけではなく、タヌキやアナグマやイノシシ、そしてクマもネットで進行を阻まれてしまいます。行動範囲を狭められた野生動物の進行方向には登山道もあります。今回もシカ8頭、タヌキ3頭、と遭遇しました。
近くにはクマも居たはずです。クマは雑食で木の実や果実を食べますがシカやタヌキなど動物の死骸も食べます。四国のクマが人間を食料と思って襲うとは個人的には思いませんが、厳しい森の食物連鎖と縄張り争いの中でやっと出会ったアケビや栗、シカの死骸を食べている時に人間と遭遇したら「大切な食料を奪われる」「俺のだ!」と襲いたくなるのは動物として当たり前の自然な気持ちではないでしょうか。それが子供連れだったら余計に攻撃的になるのではないでしょうか。

イオンや柳町を歩きながらそんなことを考えることは無いと思います。
自然を歩くことで知ること、考えること、変わることは沢山あります。
自然の中に入るとはそんなことを身近に感じ考えることだと思います。




「衣食住」

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このバックパックの中にテント、-15℃でも眠れる寝袋、三日分(非常時なら約10日分)の食料、防寒着、レインジャケット・パンツ、ライト、水筒、ファーストエイド、コンロ、クッカー(鍋)、携帯トイレ、などが入っています。


「熊」

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会いたいような遭いたくないような…


「登山道」

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川沿いの獣道を2時間ほど歩きます。
道中、こんなにラテンな植物や

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シカが巨木の皮を食べていたり

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シカの亡骸があったり…

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そんな森の中を抜けると数年前の豪雨でできた土石流の後が。
遠くには目指す尾根が見えます。

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「昼食」

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トレッキングのときはこのようなもので昼食を済ませています。
行動食と言われるもので他にナッツとドライフルーツをミックスしたものも持って行きます。煎り大豆、せんべい、小魚を混ぜたものが私のお気に入りで、いつも自分でミックスして作っています。


目指す尾根を眺めながら豆を頬張って気合を入れて、ここから約2時間怒涛の登り道を歩きます。
登り始めてすぐに左腿に違和感を感じ、30分も歩くと足を上がられないほどの痛みになっていました。今までは膝の裏が痛くなっていたので膝サポーターとテーピングは持って来ていますが、腿の痛みは始めてで処置能力は全くありません。とりあえず筋と関節を揉み解しながら騙しだましで何とか三嶺山頂に到着しました。

左に明日目指す西熊山までの縦走路が見えます。

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この尾根伝いの約2時間の登山道が私は一番好きです。
優しいんですよね、自然の表情が。

当初はこのまま西熊山まで行く予定でしたが、シャレにならない足の痛みと北西からの刺すような冷たい風を考慮して今夜は下の画像奥に見える山小屋(三嶺ヒュッテ)で寝ることに。

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ここは数年前?に新築された無人小屋で中は広く清潔で申し分ありません。しかも手続きも予約も必要なく誰でも無料で利用できます。

「気持ちいい野外の空気を吸って自然を多く感じながら星の下で眠りたい」

という気持ちから私のトレッキングはテント泊か野宿が大前提なんですが、この天候と体調で無理してテントで眠ると明日の下山は厳しいと判断して始めて小屋で泊まることにしました。

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寒さと動かなくなった足の痛みを和らげたいのでお湯を沸かしてコーヒーを入れドライフルーツ&ナッツとビスケットでお腹の中から暖め、足を伸ばしながら揉み解すと血は廻り体中が温かくなりホッと安心しました。

「生気って存在するんだなぁ…」

と思えるのも厳しさを経験したからなんですよね。

生気を取り戻したので明日の足の状態を少しでも良くしようとストレッチとマッサージを一時間ほど入念にして、マットを敷いて寝袋の中に包まって金子光春「反骨」を読んでいると山で読むには難しすぎてまったく頭に入らずいつの間にか眠っていました。寝返りを打つたびに目が覚め、足が攣っては目が覚め、暴風の音で目が覚め…朝まで夢と現実の間をまどろんでいました。

朝、お湯を沸かそうとウォータータンクを持つと中がシャーベット状になっていました。
ダウンジャケットを羽織りコーヒーを持って小屋の外に出ると

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霧氷の世界でした。
霧氷は空気中の水分が風に冷やされ植物に付着する現象で、その氷は風の当たる方向へと伸びて行きます。

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辺りはガスに覆われ視界は悪く、痛いような寒さが風と一緒に肌に刺さります。
震えながら小屋に戻り小窓から風向きと空の様子を観察しながら朝食を作ります。

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フリーズドライのお茶漬けを始めて食べましたが、山の朝食はこれに決定です(笑
食事を済ませ荷物をパッキングしてストレッチで身体を解し天候の回復を待ちましたが風とガスは収まりません。一時間ほど待っていると西からの強い風が若干北寄りに変わり、雲の流れにも少し変化を読み取ったので出発することに。

それにしても…寒い…

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視界は悪く10m先がボンヤリ見える程度。
この先の登山道と距離を知っているので迷う不安感はそれほどありませんが、視覚は人の精神バランスに大きな影響を与えます。


「無言の教訓」

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2000m近い標高では4月でも凍死してしまいます。
落石で、転んで、骨折することもあります。これが高知駅の裏だと救急車でも這ってでも日赤病院へ行けますが、ここでは自力で歩いて下りるしかありません。一人で山に入るということは命懸けで遊んでいると私は認識していますので大げさなほどの危機感を持って入山し、最悪を想定した準備と対処をしています。吉住光義さんの無言の教訓は私にもしっかり届いてます。

気持ちを引き締めて歩いていると三嶺山頂に到着。

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写真を撮っていると一瞬空が明るく…

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「ヨッシャ!太陽、来い!」

と空に向かって大声で叫ぶ(笑


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時折晴れ間も…

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南面は紅葉、北面は霧氷、下界は晴れ、上界は雲という珍しい景色に興奮し

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こんな景色の中を二時間歩ける感動と感謝を噛み締めながら歩きました。

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最後のピーク「西熊山」に登るとまたもや雲の中。

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体感温度は15℃以上違います。
自然は凄い!と単純に感じれる瞬間でした。

ここから最終目的地のお亀岩へ向かいます。

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しかし…もうお昼近いはずなのに…寒い…

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木製の標識も凍りついて解読不可能

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そして何とかお亀岩に到着。

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すぐ近くには非難小屋があり、ここも綺麗で快適な無人小屋です。

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絶景のお気に入りバルコニーで昼食を。

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一時間ほどのんびり過ごして山を下ります。

このコースは6回ほど川を渡るんですが橋(簡易)があるのは2ヶ所だけで後は石と石の間を飛んで渡るので雨が降ると通行困難になります。過去に膝まで水に入って渡ったこともありますが、近年のゲリラ豪雨や大型台風の影響で谷の形相はすっかり変わり危険度が増したので雨の後このコースを歩くのは避けるようにしています。

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今回は水も少なく靴を濡らすことなく森を歩くことが出来ました。
山歩きは山頂周辺を楽しむのではなく、その過程全てを楽しむことが出来ます。
お亀岩から森の中を4時間、360℃、空も土もじっくり観察しながら歩いて今回のトレッキングを終えました。

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高知にも、四国にも、こんな素晴らしい山があるんです!


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おまけ


駐車場へ下りる手前にこんなものがありました。

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心がとても和みました(笑



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この自然を守ろうと活動している方々がいらっしゃいます。
こんな活動も一人でも多くの方に知って欲しいと思います。

三嶺を守る会

by unsane001jp | 2012-11-08 18:31 | アウトドア