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モンゴルの丘の上で

高知で行なわれた、ある冒険家のトークショーでの話。

ここ数年でカシミヤウールが安く手に入るようになり日本の某大手アパレルメーカーや量販店に行くと数千円も出せばカシミアセーターが買えるようになったけど、ここには日本からはなかなか見えない事実が隠されている、と。


カシミヤはカシミヤ山羊の毛から作られます。カシミヤ山羊は中国、インド、ネパールなど限られた山岳地帯に生息する山羊で、セーター一着作るのに3~4頭分のカシミヤ山羊の柔毛が必要だと言われています。生息域は限られ、生息数も少ないうえに大量の毛の中の柔毛しか使われないとなると高価なのも当然です。
しかし、近年このカシミヤ山羊をモンゴルの広大な草原で大量に放牧し量産することが可能になりました。カシミヤ山羊の毛はヒツジの数倍の金額で買ってくれるので、放牧で生計を立てる放牧民は喜び、国を挙げてカシミヤ山羊の放牧にシフトチェンジしました。それまで草を求めヒツジと共に何百年何千年と遊牧してきた彼等の歴史も近代化の波が押し寄せ、効率よく現金になるカシミヤ山羊の存在が「富への入り口」に見えることを想像するのはそれほど難しくないことだと思います。

しかし、ここに大きな落とし穴がありました。
今までモンゴルの遊牧民が放牧していたヒツジは草を食い千切って食べていましたが、新たに放牧した山羊は草の根をむしり取って食べる習性があります。草が育っていなければ草の根を前足で掘り起こすこともします。その結果、山羊が草を食べた後には翌年生えるはずの草の根はなく、前足で掘り起こされた地面は鍬で耕されたような状態になっているそうです。それまで何千何万年と繰り返されてきた植物と動物の循環関係は崩れ去り、砂漠化した大地だけが残ります。そこへ全世界で当たり前のように舞い降りている「異常気象」がモンゴルへも手を伸ばし、干ばつと大雨という相反する現象か同じ国内で発生しています。干ばつで砂漠化が進んでいるところへ日本のゲリラ豪雨のような瞬間的な大雨が降り、汚泥化した水は元々草原だった大地を削り、土化を進め、その水は川へと流れ込み、下流の街はここ数年洪水被害に遭っているようです。もちろんカシミヤ山羊のことだけではなく色んな要因(ロシアによる化石燃料の採掘なども)が砂漠化を進めていると思いますが、カシミヤ山羊の関連性も強いと私は考えています。


十万円以上していたようなカシミヤセーターが数千円で買えるようになった裏に、このような惨事が隠されています。企業は底なしにカシミヤを買い付け、多くの収入が欲しい遊牧民は多くの山羊を放牧します。その二つの連帯性を築き上げているのは紛れもなく私達「消費者」です。自分達は見えないところで沢山の犠牲を作り安くて良いものを得ておきながら、モンゴルの人々に
「そんなことしてたら環境破壊になります。お金以上に大切なことがありますよ。昔のようにヒツジを飼いながら、私達のセーターが安くなるぐらいのカシミヤ山羊を飼いなさい」
と私は言えません。

何が正しくて何が間違いなのか分かりませんし、砂漠化を止める解決策の知恵も私にはありません。
ただこのようなことを一つでも多く知りたいですし、間接的なことや見え難いことにも関心を持って自分なりに考え行動していきたいと思ってます。


以前、モンゴルと聞けば
「ゲル」 「パオ」 「遊牧民」 「壮大な草原」 「馬」 「ヒツジ」 「民族衣装」 
などが頭に浮かんでいましたが、この因果関係を聞いてからモンゴルと言えば
「砂漠化」 「カシミヤセーター」 「洪水」 「グローバリゼーション」
と言う単語が浮かんできます。
なので近い将来、実際にこの眼で見に行きたいと考えてます。出来れば放牧している方の今の暮らしや価値観を少しでも体感したいと思っています。


情報や知識は与えられるだけではいけない気がしています。
知ろうとする意識を大切にしたいです。
無関心では何も終わらせることは出来ないし何も始まらないと思います。

セーター一枚が様々なことへと繋がり、私達はそこから色んなことを知り・考えることが出来るんですよね。








本日はこれ!





あぁ~こんな自然の中でテント張って寝たいなぁ~!!
by unsane001jp | 2012-01-24 03:55 | コラム